学校の畑を土壌改良しよう(1)

畑にどのくらいの堆肥や肥料を撒いたらいいのか?
畑も料理と同じく勘や目分量で肥料を撒くと塩分の濃い畑になってしまったり、栄養不足な畑になってしまいます。料理のようにすぐに味見ができないため、調整も難しく初めて家庭菜園を始める方には難しい問題かと思います。
そこで、ベースとなる土壌が今どのような状況なのかを把握するためにも、まず土壌診断を行います。実際に今携わっている中学校の畑を例にしながら何の肥料をどのくらい投入したら良いか考えてみたいと思います。

育てる野菜の特性を知る

まず初めに、育てたい野菜が窒素を好むのか、カリが多いとどうなるのか。大まかにでも良いので特徴を知っておくと良いです。
例えば、さつまいもの場合「窒素を吸収する力が強く、窒素が多すぎると茎葉ばかりが成長し、収量が減少する」といったような参考書に載っているような特徴。
また、県のホームページでは各県の土壌に合わせた「作物別施肥基準」という指標が掲載されているので、これから始める方は一先ず特性を知り、各県の施肥基準値を確認しておくことをお勧めします。
【出典】Ⅰ-2持続的生産を可能にする土づくり(1)~(3)p15~17 (chiba.lg.jp)

実際の畑ではそれぞれ環境が違うので基準通りうまくいかないことも多いと思いますが、そこから少しずつ改良を重ねていけば良いと思います。

土壌診断の結果

ここからは携わっている学校の件です。
千葉県市川市の中学校では「情報」の授業でサツマイモを育てています。校舎に囲まれた7m×7m程度の土地で日当たりも悪くうまく育たないという話を聞き、生徒さん全員が一人一株ちゃんと収穫できるよう、一緒に土壌改良をしていくことになりました。


過去に何の肥料を撒いていたかお伺いすると、「腐葉土と堆肥と石灰を毎年入れていて、肥料はあまり入れてない」とのことでしたので色々と欠乏している状態かと想像していましたが、土壌診断をしてみたところ多くの化学性(pHや養分などの性質)が過剰になっていることがわかりました。

この状態では何も加えられず、本来なら緑肥で過剰な養分を吸わせたいところですが、土壌診断をしたのが3月だったこともあり5月の苗植えの授業に間に合わないため、なるべくこれ以上過剰にならないように施肥設計を考えます。
今年の収穫が終わったらソルゴーなどの植物で緑肥を行い、フラットの状態に戻せるようにしたいです。長い道のりですが、来年の授業では少しでも違いが現れる事を願って一緒に頑張っていこうと思います。

pH過剰の対処

では、今できることは何か?
この圃場はpHが7.9と非常に高いアルカリ性の圃場です。この原因は日本の土壌は酸性だと言われている為、とりあえず石灰を入れておけば大丈夫という安心感で毎年入れてしまう場合が多いようです。pHを上げることは簡単ですが下げることはとても難しいので注意が必要です。


サツマイモの場合、適正はpH6.0なのでpH7.0以上になると収量が低下すると言われています。ここでpHを少しでも下げる為の候補が2つ。ピートモスと硫酸第一鉄です。この圃場は日当たりが悪い為ピートモスでは更に水はけが悪くなると心配ですが、硫酸第一鉄ではコストがかなり高いので今回はピートモスを深めに投入し、排水性を上げるために高めの畝と深さ20㎝程度の額縁明渠を作ります。

非常に簡易的な対処方法ですが…少しでも水はけがよくなれば良いです。

塩基バランス改善対策

EC(電気伝導度:土壌中にある物質のイオン濃度総量)は適正となっていますがよく見ると石灰飽和度、カリ飽和度、塩基飽和度が過剰状態で塩基バランスはかなり悪いです。少しでも改善したいため、土壌診断をしてくれた機関も提案してくれている通りに欠乏している硫酸マグネシウムを投入します。


土壌診断表の改善対策には硫酸マグネシウム60㎏/10a必要と記載されていますが、今回の圃場は一畝(1a)にも満たない畑です。よく肥料の使用方法に「1反(10a)に対して~㎏入れる」と記載されている肥料が多いと思いますが、今回の面積の場合はどうするか計算してみることにします。

※今回使用するマグネシウム↓(少しでも酸性に傾けたいので硫酸マグネシウムを選択)

1袋20kg入りですが、よくみると保証成分量(%)25.0と記載されています。
つまりこの1袋にマグネシウム含有量は5kgしか入ってないよ!という事になります。
ただ単に60㎏必要だから3袋入れれば良いという事ではなく、10aにマグネシウムが60㎏必要ということは、12袋入れることになりますね。これを49㎡の畑に換算すると4.9%。12袋の4.9%ということは0.58なので一袋の60%くらいを撒くことになります。
ややこしい!!

次回、「学校の畑を土壌改良しよう(2)窒素をどのくらい投入するか」…に続きます。

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