有機物と微生物の多様化

有機物資材の種類と微生物の関係

有機物を施用した場合に増加する土壌微生物の数や種類は、有機物の熟成度合いや有機質肥料の組成により大きく変化すると言われています。
※有機物とは、炭素を含む物質のこと。

  1. 硫安などの無機質肥料、ゼオライトなどの無機質資材、オガクズなどの分解しづらい有機物は微生物数にそれほど影響を与えない
  2. 魚かす、蒸製毛紛(羊毛やクジラの髭)などの動物質肥料、なたね油粕、米ぬかなどの植物質肥料、もみ殻、コーヒー粕などの植物質廃棄物は糸状菌の増加
  3. 骨粉、鶏糞、などは糸状菌、細菌、放線菌が比較的均等に増加
  4. カニ殻、乳製品汚泥、ゼラチンなどのタンパク質、消石灰などのアルカリ資材は細菌や放線菌の増加

もし土壌に病気が出てしまったら、その病気は何か?なんの菌か?まずは知ることが大事ですね。ご自身で堆肥を作られている方は、その病気によって次に入れる堆肥にカニ殻を多く混ぜたり米ぬかは少なめにしたりといった対応が可能になります。

【米ぬか・ふすま・カニ殻を混ぜている様子】

有機物の熟成度合いの確認方法

有機物の熟成度合いを簡単に知る為に確認する成分項目があります。
炭素率(C/N)比といい、肥料や堆肥袋に分析表が必ず記載してあり、炭素(C)と窒素(N)の量を比率で表したものです。
C/N比は値が低いほど炭素が少なく窒素が多い、値が高くなると炭素が多く窒素が少ない状態です。基準値は20でそれを境に高いか低いかを判断する場合が一般的です。

【C/N比が低い値】

有機物中の炭素(C)は微生物の活動(発酵)のエネルギーとして分解・消費されるため、堆肥化が進むと炭素は減少、窒素が高い状態=C/N比が低い値になります。このC/N比が低い有機物は土壌中で分解されやすく、植物が窒素を吸収しやすい形になります。

【C/N比が高い値】

しかし、C/N比が高い値の場合、有機物の中に炭素を多く含み炭素を分解するために、作物に必要な土壌中の窒素まで微生物の分解に使われてしまうので、『窒素飢餓』という状態を起こしてしまう場合もあります。このC/N比の値が高いほど未熟な堆肥とも言えます。

  1. 肥料効果を期待したい場合はすぐに分解されるC/N比が10以下の有機物。鶏糞や野菜くず等。
  2. すぐに植え付けをする場合や、肥料も土壌改良も期待したい場合は10~20の有機物。馬糞や牛糞等。
  3. ゆっくり土づくりをする場合は20~30以上の有機物。稲わらやおがくず、バーク、落ち葉等。
    ただし、堆肥化前のバークや落ち葉はC/N比50~100にもなり、未熟のまま土壌に入れてしまうと窒素飢餓を起こすので注意が必要

この三段階を目安に、目的に合わせて選択すると良いです。

C/N比が10〜20が一般的な牛糞堆肥ですが、20〜30と表記されている場合は未熟な可能性があるので購入する際の一つのチェック項目にしてみて下さい。

ただ単に菌が増えるからと有機物を入れるのではなく、土壌の様子を見ながら有機物の選択、腐熟度合いを確認するのも大事なことですね。

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